公募研究
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ディープニューラルネットワークによるテキストから時間情報の抽出

研究代表者:
程 飛 (Fei Cheng) 京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 特定助教

ニューラルネットワークのアイデアは、1980年代から提案されています。ハードウェアの計算能力と当時のデータ量の不足によって残念ながら止められました。ニューラルネットワークは、大量のデータから特徴表現を自動的に学習する機能を持つように設計されています。近年、ハードウェア (GPU, TPU, etc.)と密な単語の分散表現 (word2vec, BERT, etc.)のような いくつかの主要なコンポーネントの改善により、ニューラルネットワークは多くの自然言語処理タスクにおいて最先端のパフォーマンスを向上させる能力を示し始めます。本研究では、様々なニューラルネットワーク技術を探索することにより、自然言語テキストにおけるイベント間の時間的関係を分類するという課題に挑戦することを目標としています。英語(TimeBank)と日本語(BCCWJ-TimeBank)両方のコーパスにおける新しいモデルを実験することを計画しています。

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空間認知からの時間生成

研究代表者:
有田節子 立命館大学 大学院言語教育情報研究科 教授

本研究は、厳密に統制された実験によって、九州方言、韓国語、琉球諸語を含む周辺諸言語での時間・空間の認知プロセスを明らかにする。従来の言語学的分析に加えて、発話に随伴するジェスチャーとさまざまな装置を用いた実験的手法によって、時空間の認知プロセスの解明を試みる。この分野の先駆的な研究で知られるRafael Núñezの随伴ジェスチャーの記録による方法を用いることにより、メンタルプロセスにおいて現在処理中の焦点的な要素と言語表現の近称(「コ系列」)と現在時、また、中称(「ソ系列」)、遠称(「ア系列」)と「イベント時」「過去時」との関連が明らかになることが期待される。本研究は談話管理理論における空間・時間処理のプロセスの相関をマイクロ・ジェスチャーにより明らかにする初めての試みで、人間言語に普遍的な時間認知のメカニズムを解明することにつながる。

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Mind Time Machineの構築とシステムの主観的時間生成の解析

研究代表者:
池上高志 東京大学 大学院総合文化研究科 教授
Mind Time Machine, YCAM, 2010

多様で多重に入力を受け付ける人工システムの中で、どのようなシステム固有の時間が発生しうるか、その定量化とともに、発生する時間を構成論的に解明することを目的としたプロジェクトを構想中。2010 年には、カオス的な神経回路を搭載したカメラを15台もたせた、video feedback のネットワークを構築。これを用いて、Benjamin Libetのアイディアなどをもとに、自律人工システム MTM [Mind Time Machine] を構築し、そのシステムの数ヶ月に渡る学習と記憶の変化を記録した (Ikegami, 2010, 2013)。本プロジェクトでは、昨今の技術進化と新しい時間のアイディアをもとに、人工システムがいかに自己組織化する新しい時間を解析する。

Takashi Ikegami Studying a self-sustainable system by making a mind time machine. ACM Digital Library. 2010
Takashi Ikegami A Design for Living Technology: Experiments with the Mind Time Machine. Artificial Life, Summer/Fall 2013, Vol. 19, No. 3(4), pp. 387-400, 2013

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発話のリズムや順序を制御する神経機構

研究代表者:
田中 雅史 東北大学大学院生命科学研究科 助教
発話のリズムや順序を制御する神経機構 イメージ図

本研究は、歌をさえずる鳥(スズメ亜目)の一種キンカチョウが、ヒトと同様、一定のリズムで生成される言語的発話を通してコミュニケーションを行う動物であることに着目し、その発声の時間制御をささえる神経メカニズムを調べる。この目的のため、本研究では、歌の生成に必要不可欠な運動感覚野HVCにおける周期的な同期活動(Hamaguchi et al., 2016)がキンカチョウの歌の時間制御を行っている可能性を検証し、またこの活動が発達期の歌の学習を通してどのように変化するかを計測する。さらに本研究では、HVC内の特定の神経細胞群へチャネルロドプシン(ChR2)を発現させ、様々なタイミングでHVC内の神経活動を活性化・不活性化することによって、HVCの神経活動と歌のタイミングの関係を探る予定である。本研究の特徴は、発達が早く安価なキンカチョウを用いることで、発声のリズムや順序を制御する神経メカニズムとその発達を、シナプス・細胞レベルで効率的に解明することである。キンカチョウの感覚運動野HVCは、ヒトのブローカ野との類似性も指摘されており、本研究が成功すれば、ヒトの発話における時間制御の神経機構の解明に向けて重要な示唆が得られると期待できる。

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未来を予測して身体運動の時間遅れを克服する神経メカニズムの解明

研究代表者:
武井智彦 京都大学白眉センター/医学研究科 特定准教授
予測的な運動制御の神経メカニズム仮設

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」—外界や自分の動きの変化(未来)を予測してそれを現在の行動選択に活かしていくことは、我々動物の基本的な行動戦略です。そのため神経障害等によって予測システムが機能しなくなると、私達の行動は巧みさを失い、上手に環境に適応できなくなってしまいます。それでは私たちの脳は一体どのような神経メカニズムによって未来を予測しているのでしょうか?本研究では、動物が自分の運動の未来の結果を予測して現在の行動を決定する神経機構を明らかにするために、1)ウィルスベクターを用いた神経回路操作、2)ロボットアーム等を用いた詳細な行動評価、3)計算理論にもとづくシミュレーションを組み合わせて、動物の適応的な運動制御に関わる神経回路(ハードウェア)とその機能(計算論)を包括的に明らかにすることを目標としています。

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知覚学習と脳刺激による主観的時間の操作

研究代表者:
林 正道 情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 研究員
知覚学習と脳刺激による主観的時間の操作

ヒトのこころに内在する時間感覚は、時計やストップウォッチのように正確ではなく、さまざまな要因によって伸縮したり曖昧になったりする。しかしながら、このような主観的な時間感覚のゆらぎが、どのような脳のメカニズムから生まれてくるのかはよくわかっていない。これまでの研究では、数百ミリ秒の時間長がヒトの脳の下頭頂小葉における時間長選択性ニューロン群によって表現されている可能性が示唆されている。そこで研究代表者は、知覚学習および非侵襲脳刺激によってこの領域の神経細胞の応答を操作し、その結果生じる主観的時間の伸縮及び時間推定精度との関係を調べる。本研究により、ヒトの主観的時間を制御する技術を確立し、主観的時間体験を生み出す脳の因果的メカニズムを解明する。研究成果は、ヒトの時間知覚や時間情報を利用した様々な知覚や行動のモデル化に貢献することが期待できる。

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霊長類の行動タイミングを制御する後頭頂葉と高次運動野の神経活動連関の光計測と制御

研究代表者:
蝦名鉄平 東京大学 大学院医学系研究科 助教
霊長類の行動タイミングを制御する後頭頂葉と高次運動野の神経活動連関の光計測と制御

「飛んで来るボールに合わせて手を伸ばす」。ある瞬間の環境の情報を手掛かりにして、その後の行動を決定するためには環境の変化を予測して、適切な行動を適当なタイミングで実行する必要がある。タイミングを計っている時には脳の様々な領域で、神経活動が継続して増強あるいは減弱し続ける活動が見られ、この神経活動がある閾値を超えた時、動物は行動を起こす。しかし、環境からの入力がどのようにこれらの神経活動を誘発して、適切なタイミングで行動を起こす事ができるようになるのかについてはよくわかっていない。本研究は、環境情報を手掛かりに、適切な行動を、そのタイミングを調整しながら実行する時の大脳皮質領域間の情報フローを2光子イメージングと光遺伝学による神経活動操作法を用いて実際に霊長類の大脳皮質で計測し、検証する事を目的としている。

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過去の経験に基づき報酬をどのくらい待ち続けるか決定する神経基盤の解明

研究代表者:
村上誠祥 山梨大学 大学院総合研究部医学域 特任助教
過去の経験に基づき報酬をどのくらい待ち続けるか決定する神経基盤の解明 イメージ図

いつも乗る通勤電車が遅れていたとき、どのくらい電車を待つべきで、いつ諦めて別の手段に切り替えるべきだろうか。このような状況では、過去に同様の状況でどのくらい待たされたかという経験に基き、適切に行動のタイミングを決定する必要がある。

本研究では、報酬の遅延時間分布の知識に基づいた適応的行動タイミング決定の神経基盤を明らかにする。前頭皮質の神経集団により時間分布の情報とそれに基づく行動タイミングの情報がどのように表現され、またそこからどのような出力が下流に送られることで適切なタイミングでの行動発現につながるのかに迫る。この目的を達成するために、研究代表者が独自に開発した遅延報酬課題と、多細胞からの神経活動記録、神経投射のトレーシング、光遺伝学的/薬理遺伝学的神経活動操作などを組み合わせて用いる。

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外的刺激による間隔時間知覚の操作とそのメカニズムの解明

研究代表者:
四本裕子 東京大学 大学院総合文化研究科 准教授
外的刺激による間隔時間知覚の操作とそのメカニズムの解明 イメージ図

視聴覚刺激の操作により神経引き込みを誘発したこれまでの研究を発展させ、本研究では、(1)経頭蓋交流電気刺激(tACS)により神経引き込みを誘発する方法と(2)触覚デバイスを用いて周期的な触覚入力を与える方法を用いる。

本研究計画であつかう問いは、以下の3つである。
[1]脳への電気刺激で脳活動を操作して間隔時間知覚を操作できるか
[2]より現実的な場面で、時間知覚を操作できるか
[3]視覚・聴覚以外のモダリティの間隔時間知覚も、周期的脳活動で説明可能か

 

実験では、視覚刺激の間隔時間知覚に重要な役割を果たすことが明らかになっている周波数のtACSで大脳皮質を刺激し、間隔時間知覚が変化する様子を測定する。刺激する脳部位や刺激周波数をパラメトリックに操作し、間隔知覚に影響する周波数や関連する脳部位を特定する。

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時刻依存的な睡眠パターンを形成する神経基盤の解明

研究代表者:
平野有沙 筑波大学 医学医療系 国際統合睡眠医科学研究機構 助教
時刻依存的な睡眠パターンを形成する神経基盤の解明 イメージ図

生物は自律的に時を刻む計時システムを内在し、外界環境へ適応する。特に、地球の自転周期にあわせた概日性の生理リズムを生み出す概日時計(サーカディアンクロック)は、下等生物から高等生物まで広く観察される。哺乳類においては、概日時計の中枢は視床下部のごく微小な神経核である視交叉上核(SCN)に存在している。SCNは不均一な細胞集団であり、その中には「時を刻む振動細胞(clock cell)」、「時刻情報の発信細胞(output cell)」と「外界環境への同調細胞(input cell)」がうまく共存して時計システムを形成していると考えられるが、SCNの細胞集団の個性を理解して特異的な解析を行った研究は極めて少ない(図)。本研究では、特に理解の遅れている時刻情報出力機構に着目し、Creリコンビナーゼとウイルスベクターを用いて目的の神経細胞特異的な遺伝子操作を行う。SCNからの神経ネットワークの特徴と機能を明らかにし、最終的な目標として概日時計の入力系・発振系・出力系を含めた時刻情報ダイナミクスの統合的理解につなげたい。

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脳の時間の単位の進化:
ヒト・サル・イルカの無侵襲脳波記録による検討

研究代表者:
伊藤浩介 新潟大学 脳研究所 統合脳機能研究センター 特任准教授

脳への感覚入力は、一定の時間窓(時間幅)で時間的に統合されて知覚される。例えば聴覚では、数100 ミリ秒の時間窓が単位となり、この時間窓内の刺激はひとつの聴覚イベントに統合されて聞こえる。/pa/のような子音と母音からなる音節は、あくまでも全体として/pa/と聞こえるのであり、/p/と/a/に分けて聞くことは努力しても困難だ。このように、時間統合窓は知覚の時間分解能の上限を規定し、大脳高次機能の時間を刻む単位のように機能する。

時間統合が神経回路網の機能であることを考えると、時間統合窓の長さに種差があっても不思議ではない。知覚の時間窓が進化でどのように変化したか(あるいはしなかったか)は、脳の時間の進化を考える上で、根本的な問題である。しかし、知覚の時間窓に種差があるかもしれないという可能性そのものが、これまで検討されたことがない。

そこで本研究は、ヒト、マカクザル、マーモセット、およびイルカを対象とした聴覚誘発電位(AEP)の無侵襲記録により、時間処理がとくに重要な聴覚について、脳の知覚の時間窓の進化を明らかにする。無侵襲AEPは、ヒトの実験を厳密に同じ形で様々な動物に適用できる強みがある。ヒトで聴覚の時間窓を反映することが知られているAEP 成分の指標を種間で比較することで、聴覚の時間窓の種差を明らかにしていく。

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“情動が時間知覚に与える影響”の発達過程とその個人差に関する神経生物学的研究

研究代表者:
土居裕和 国士館大学 理工学部 人間情報学系 准教授

不愉快な相手と夕食を共にするときや、叱られているときには、早く時間が過ぎないかとじりじりすることになる。このように、不快情動を感じている時には、時間の流れを遅く感じることが知られている。さらに。成人を対象とした近年の研究から“情動が時間知覚に与える影響”の大きさが、個々人の不安感の強さにより異なる可能性が指摘されている他、不安感の個人差を規定する生物学的因子が明らかにされつつある。

これらを踏まえると、不安に関係する生物学的因子と神経系発達の影響により、発達途上の小児・思春期児童の主観的時間経験の個人差が生じていると考えられるが、この点についての実証的研究は数少ない。

本研究では、幼児期・思春期の児と、成人を対象に、心理物理学的手法により、“情動が時間知覚に与える影響”を測定する。さらに、セロトニン・オキシトシン神経系活動に関係する生物学的因子を測定する。これらのデータに基づく学際的アプローチにより、発達と個人差の二軸に着目し、発達途上における時間経験の多様性を描き出すことが本研究の目的である。

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ヒト記憶における自己と時間の相互作用機構と作話症状の理解

研究代表者:
月浦 崇 京都大学大学院人間・環境学研究科 教授
「自己・時間・記憶」の相互作用メカニズムと「作話」症状の理解 イメージ図

作話とは、実際には体験していない出来事をあたかも体験したかのように話す現象のことであり、前脳基底部などの損傷による健忘症患者においてしばしば観察される。作話症状の背景に記憶障害があるのは明確であるが、一方で記憶障害があるからと言って必ずしも作話を発症するわけではなく、作話がどのような心理過程の障害を内在しており、それがどのような脳内機構を基盤として生起しているのかについては、明らかになっていない点も多い。本公募研究では、作話の生起に関連するメカニズムを「時間」を媒介とした「自己」と「記憶」の相互作用が重要であり、自己参照に関連する内側前頭前皮質、記憶に重要な海馬、そしてそれらを媒介する前脳基底部の間の機能的ネットワークが関与すると仮定する。この仮説を、機能的磁気共鳴画像(fMRI)によるヒト認知神経科学研究と、神経疾患患者を対象とした神経心理学的研究から検証する。

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時間生成の解明に迫る比較認知神経科学

研究代表者:
兎田 幸司 慶應義塾大学 文学部人文社会学科 助教

時間認識は、視覚や聴覚など他の知覚系とは異なり、時間情報のみを担っている脳部位が存在しない。ヒトを含めた動物は、自らを取り巻く外部世界から受け取る感覚情報と、自己の感覚運動情報を統合することによって、時間認識を生み出さなくてはならない。これまで心理学では、数秒から数分の時間認識について研究が行われ、時間に関する仮説が積み重ねられてきた (Buhusi & Meck, 2005)。しかしながら、動物の時間認識を検証するために用いられてきた従来のオペラント条件づけ手続きは、訓練に長期間を要し、動物が課題中に自由に行動できるために時間認識と行動表出の側面が混同されるといった問題点を包含していた (Machado & Keen, 1999)。この問題を解決するため、申請者は、動物の時間認識を効果的に調べる画期的な手法を開発した。頭部固定されたマウスを用い、リッキング(舐める行為)を反応として利用することで、身体運動の要因をできる限り排除し、試行ごとの動物の主観的な時間認識の開始と終了のタイミングを計算理論によって切り出すことに成功した。数ヶ月以上の訓練を要した従来の課題に比べ、本課題では、1-2週間の訓練によって、動物の時間認識を検出することが可能になった。本研究では、この行動課題を軸に、最新の神経活動を操作・計測する技術と、行動の網羅的な画像解析技術などを融合させていくことによって、時間の情報が脳のどこで処理されて、どのように時間の情報に基づいた行動が生み出されているのかについて、一連の情報処理過程を明らかにしていく。