お知らせ
研究成果 2021年02月15日
Current Biology誌に未来予測に基づく運動制御メカニズムの研究成果が掲載(C01班 武井)
未来を予測して行動することは私たち動物の生存を左右する重要な能力ですが、その神経基盤の多くが未解明です。本研究では運動中の動物の大脳皮質の一部を一時的に不活性化し、それによる運動の変化をコンピュータシミュレーションによって再現することに成功しました。その結果、頭頂葉5野が「現在」の状態の推定に関わり、背側運動前野が「未来」の運動指令の決定に貢献していることを発見しました。
研究成果 2021年02月04日
Current Biology誌に数分単位の時間経過を担う神経基盤の研究成果が掲載(E01班 池谷)
分・秒・時間などの様々なスケールで流れる時間情報の適切な処理は、危険の回避や食物の獲得に重要ですが、その神経基盤の多くが未解明です。本研究では動物に数分後の出来事を意識させ、行動と神経活動を解析しました。その結果、動物が経験に基づいて時間認識を生成していく過程で、海馬と線条体の一部の神経細胞が時間経過に依存して活動するようになることなどを発見しました。
研究成果 2020年11月5日
Cerebral Cortex誌にA01班とB01班の共同研究の成果が掲載
脳のネットワークの中心に位置する楔前部に、時間の原点=「現在」が表現されていることを示す成果です。
研究成果 2020年9月14日
Journal of Neuroscience誌に主観的時間の神経基盤に関する論文を発表(C01班 林)
C01班の林らは、数百ミリ秒の特定の時間の長さの視覚刺激を反復呈示することにより生じる時間の錯覚(時間残効)を用いて、縁上回と呼ばれる脳領域が主観的な時間経過の知覚に関連することを明らかにしました。
研究概要
研究領域名
時間生成学 ― 時を生み出すこころの仕組み
(英訳名: Chronogenesis: how the mind generates time)
領域番号
8002 複合領域
領域代表者
北澤 茂 (大阪大学大学院生命機能研究科・教授)
研究期間
2018(平成30)年度~2022年度
北澤茂・大阪大学大学院生命機能研究科教授
本領域の目的

我々は過去と現在と未来を区別しながら生きている。ヒトで特に発達したこの時間の意識-こころの時間-はどこからどのように生まれるのか。先行領域「こころの時間学」領域における5年間の学際研究は多数の優れた論文を生み出し、当初掲げた3大目標を達成する成果を挙げた。


図1 先行領域の3成果が出発点

成果1. 大脳皮質内側面に「未来―現在―過去」の時間地図を描き出すことに成功した。

成果2.実験動物研究で開発された「こころの時間」の操作法を臨床応用につなげた。

成果3.エピソード様記憶の系統発生と個体発生を明らかにした。

先行領域の成果をふまえて、さらに一層の飛躍を図るために、新たに時間情報を生成する「人工神経回路」を構築して対照として用いる。比較を通じて1)「時の流れ」の意識が生れる過程、2)脳内の周期的な「時を刻む」活動が時間の意識や運動のリズムを生み出す過程、3)発達や進化とともに「時を獲得する」過程、4)病気に伴って「時を失う」過程、の4過程を神経回路のレベルまで掘り下げて明らかにする。

本領域の内容

本領域には5つの計画研究班を設ける。中心のA01「作る」班は、自然言語を入力として、記述されたイベントの時間順序を出力する人工神経回路を構築する。さらに、4つの学際的な計画研究班が 1)「時の流れ」の意識が生れる過程(B01)、2)脳内の周期的な「時を刻む」活動が時間の意識や運動のリズムを生み出す過程(C01)、3)発達や進化とともに「時を獲得する」 過程(D01)、4)病気に伴って「時を失う」過程(E01)、の4過程を神経回路のレベルまで掘り下げて明らかにする。


図2 「時を作る」エンジンと4枚のプロペラで飛躍する
期待される成果と意義

図3 期待される5つの成果
1. 時を生み出す人工神経回路を作る!
2. 脳と人工神経回路を比較して時間情報処理の実体を解明する
3. 楽しい時間はなぜ早く過ぎるのか、にも解答
4. 認知症など時の障害の予防・治療法を開発する
5. 時の意識の進化と発達の過程も解明

有機的な連携を通じて5個の成果を得ることを期待している。

(1)「こころの時間」の機能を発揮する人工神経回路を構築する。

(2) 大脳皮質内側面の未来―現在―過去」の時間地図の機能と生成の仕組みを明らかにする。

(3)「思い出が懐かしいのはなぜか」「楽しい時間はなぜ速く過ぎるのか」などの日常の内観と神経活動の関係を明らかにする。

(4) 新たな時間の操作法を開発し、認知症の早期診断や症状改善などへの応用を進める。

(5) ヒトとヒト以外の動物、成人と子供、の共通点と相違点を具体的に解明する。

本領域の成果は、時間の意識が失われる認知症などの疾患の治療に応用されるだけでなく、「楽しい時間はなぜ早く過ぎるのか」といった日常の疑問に神経回路に即した科学的な回答を与えることを通じて、一般社会にも広く還元される。

キーワード
こころの時間:ヒトにおいて特に発達した現在・過去・未来にわたる時間の意識。脳が作り出すので、物理世界の時間と一致するとは限らない。
お問い合わせ先
新学術領域「時間生成学」事務局
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大阪府吹田市山田丘 1-3
大阪大学 大学院生命機能研究科 ダイナミックブレインネットワーク研究室
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